静電気による障災害

静電気の発生のメカニズム

 静電気は一般にどのような場所でも発生します。発生原因はいろいろですが工業上問題となるのは剥離帯電と摩擦帯電で、それによって発生する誘導が主なトラブル原因になります。

  • 剥離帯電

    重ね合った2つの物が剥離するときに発生します。イスから人が立ち上がる、シートをはがす等が代表的です。
  • 摩擦帯電

    2つの物をこすると静電気が発生します。これが静電気のもっとも基本的な発生原因です。どちらがプラスになるのか、マイナスになるのかを実験的に求めた帯電列という物があります。
    帯電列
    -<硫黄<天然ゴム<エポキシ樹脂<ポリスチレン<綿<羊毛<岩塩<ガラス<シリコン<+
    大昔から実験結果によって帯電列が判明していて、この列の離れている物同士を摩擦するとより強い静電気が発生します。
    現象としては一番目にする現象で、洋服を脱ぐ、ベルトコンベヤ上でワークが滑る、シューターへ落下するときに物がこすれる、ミキサーで物を混ぜる、人間が歩く、車から降りるなどありとあらゆるところで発生します。
  • 他の帯電

    粉砕帯電、流体の帯電、粉体の帯電、化学反応による帯電など。
  • 導体の静電気による誘導

    上着を脱いだときにドアノブに火花が飛ぶ、車から出るときにバチッとくる、ハードディスクのヘッドがそばの帯電物による誘導で破損する、樹脂のペレットを入れる金属容器に触れて火花が飛ぶなど。

 絶縁物への帯電は一般的によく見る現象ですが、導体の誘導自体は静電気によってのみ起きるというわけではなく電磁気学的にそばに電界があれば必ず起きます。一般に誘導による静電気現象は目にすることが多いはずです。

 人体は静電気的には(抵抗値から)導体と考えられているため、誘導が発生します。洋服(上着)を脱いだときに下着に発生した静電気は、そのまま人体に誘導します。誘導した電荷は人体にたまっていますのでドアノブなどに触れたときにバチッとくることになります。(人体剥離帯電誘導モデル)

 また歩いたときに靴と床との摩擦でも同様に誘導が発生します。(人体摩擦帯電誘導モデル)また乾いた布で体をこするとやはり摩擦帯電により人体に電荷が発生します。(人体摩擦帯電モデル)

 人体に帯電した電荷が激しく変動するため、リストストラップなどの接地対策をしないとイオナイザでは除電しきれない場合があります。

 同様なことが工業製品の半導体などにも発生します。基板をハンドラでコンベヤから持ち上げる、ICをマウタでマウントするために持ち上げる、など、物と物とが「はがれる」「こすれる」事が起きると相手が導体であるにしろ絶縁物であるにしろ必ず静電気が発生します。

 静電気が発生すると、導体がそばにあると誘導が発生し、他の金属などに触れると放電がおき、ノイズやICの破損などの障害が発生します。人体に帯電(誘導)した電荷はピンセットなどでワークに触れたときに放電を起こしてICやワークなど破損させます。

 空気中に浮遊しているチリなどが空気との摩擦で帯電したり、車が走行中に空気との摩擦で帯電します。金属容器に樹脂のペレットを入れたときに誘導によって火花が飛ぶ事もあります。

 塗装工程などでは空気中の異物付着が問題となっています。これはワークが帯電している場合とちりそのものが帯電している場合があり、どちらもイオナイザを導入することで改善されます。


参考文献

  • 静電気学会編:新版・静電気ハンドブック(オ-ム社 1998)
  • 労働省産業安全研究所編:静電気安全指針,RIIS-TR-87-1(1988.3)
  • 労働省産業安全研究所編:静電気用品構造基準,RIIS-TR-91-1(1991.7)